まわり続けるリサイクル

飲み終えたペットボトルはどこへ行く?

神戸で続く「ボトルtoボトル」リサイクルの現場から

2026.03

神戸市では、缶・びん・ペットボトルを分けずに、同じ日に収集しています。

多くの市民にとって、資源を決められた日に出すことは、日々の暮らしの中にすっかりなじんだ行動です。けれど、その「いつもの行動」が、その後どのようにつながっているのかを、私たちはあまり意識することがありません。

市内の家庭から資源として収集された使用済みペットボトルは、回収されたあと、再び飲料用のペットボトルとして生まれ変わる「ボトルtoボトル」という形でリサイクルされています。これは、プラスチックのリサイクルの中でも特に品質管理が求められる取り組みです。

今回の取材では、神戸市のペットボトルリサイクルを担う遠東石塚グリーンペット株式会社の担当者にお話を聞き、私たちの暮らしのすぐ先で、身近なプラスチック製品の資源循環がどのように支えられているのかをたどりました。

神戸で資源循環させるということ

神戸市は、人口約150万人の都市です。その分、家庭から出るペットボトルの量が多く、回収される資源の規模は国内でも大きい部類に入ります。また、同市では、缶・びん・ペットボトルの「混合収集」が行われているため、リサイクルを行うためには収集後に素材ごとに正確に選び分ける必要があります。大量の資源を扱いながら、混ざった状態から確実に素材別へと分けていく。その工程は決して単純ではありません。さらに、収集された資源は「次の工程」を待って溜めておくことができません。一定のリズムで収集し、選別し、次の工程へ送り出し続ける。この流れが途切れないことで、都市規模の資源循環は支えられています。

毎日のベール引き取りが必要なペットボトル

家庭から出されたペットボトルは、パッカー車(収集車)で、市内各地から西区にある「資源リサイクルセンター」へ運ばれます。ここで、混ざった状態の缶・びん・ペットボトルが素材ごとに分けられ、選別されたペットボトルは運搬しやすいよう圧縮されます。この圧縮されたペットボトルの塊は「ベール」と呼ばれます。1本あたりでは軽くてもかさばり、そのままでは大量に運べないペットボトルも、この方法で効率よくトラックへ積載することが可能になります。

▲収集されたペットボトルが圧縮され塊になった「ベール

神戸市では収集量が多いため、配車や引き取りのタイミングにも細かな調整が欠かせません。ベール引き取りの流れが滞らないよう、日々の調整が続けられています。

こうしてベールは、ボトルtoボトルを行うリサイクラー(再資源化事業者)である遠東石塚グリーンペットの姫路工場へと運ばれ、収集、選別、圧縮、運搬という流れが毎日繰り返されています。

▲ベールの集積場

分けるのは機械、判断するのは人

姫路工場には、中部~九州エリアの各地から集められたペットボトルが運び込まれます。
同工場の各工程は高度に機械化されていますが、すべてを機械だけで判断できるわけではありません。素材の状態を見極める場面や、異常が起きたときの対応など、人の目と判断が欠かせない工程があります。安定して品質を保つためには、設備だけでなく、現場で働く人の経験や感覚も重要です。そして、大量のペットボトルを扱いながらも、工程を止めずに回し続けることが前提になります。

姫路工場で進む「ボトルtoボトル」リサイクルの工程

同工場では、運び込まれたペットボトルを再びペットボトルの原料に戻す「水平リサイクル」のための工程が一貫して行われています。

まず、ベールをほどいて金属やガラス片などの異物を取り除きます。そして選別をした後にペットボトルを細かく砕き、「フレーク」と呼ばれる状態にします。次に、アルカリ洗浄を行い、表面に付いた汚れを丁寧に落とします。

洗浄後は「比重分離」と呼ばれる工程へ進みます。これは具体的に言えば「水の中で、破砕されたペットボトルは沈み、キャップやラベルなどの付着物は浮く」という性質を利用して、素材ごとに分けるという工程です。取り除けなかったラベルやペットボトル口部のリングはこの工程で分離されます。

選別されたフレークは溶かされ、「ところてん状」に押し出されたあと、細かく裁断されて粒状に加工されます。こうしてできた粒は「ペレット」と呼ばれ、さらに人間が口にしても問題が無いように品質を整える工程を経て、ペットボトルの原料となる「樹脂(レジン)」へと仕上げられます。

最終段階では、アセトアルデヒドなど不純物の成分を測定し、管理基準を満たしているかを確認します。そして、基準をクリアしたものだけが、次の製造工程へと送り出されます。

砕く、洗う、分ける、加工する、確かめる。

これらの工程を一つずつ重ねることで、使用済みペットボトルは再び原料として戻っていきます。

安定供給のためのメカニカルリサイクル

同工場のボトルtoボトルで使われているのは、「メカニカルリサイクル」と呼ばれる方法です。洗浄や選別を重ねながら、使用済みペットボトルを原料へ戻していきます。

プラスチックのリサイクルには、素材を分子レベルまで分解する「ケミカルリサイクル」という方法もあります。ケミカルリサイクルの場合、品質面での可能性は広がりますが、使用エネルギーが多いためコスト面での課題があります。このため、日常的に大量に使われるペットボトルのリサイクルの現場では、品質、処理量、コストのバランスを踏まえた現実的な方法として、メカニカルリサイクルが採用されています。最近では、メカニカルリサイクルの工程で出たPET残渣を、ケミカルリサイクルを行う会社へ引き渡してリサイクルするなど、2つのリサイクル手法を組み合わせた更なる再資源化率向上に向けた取り組みもあります。

流れを止めないために、現場が最も気を配る「異物の混入」

同工場では、集まってきたペットボトルを再び原料へとつなぐ工程が日々続いています。その流れを安定して回し続けるうえで、取材の中でも特に意識されていたのが混入された「異物」への対応でした。

▲同工場で手選別によって取り除かれている異物一覧

工場には、受け入れ後に異物を取り除く工程があります。混ざり込むものの種類によっては、現場の安全や作業の進み方など、工程そのものに大きな影響が出ます。

例えばモバイルバッテリーや蓄電池などの電池類は、火災につながるおそれがあります。他の地域で起きた事例を参考に、現場では特に注意が必要なものとして周知されていました。もう一つ例に挙がったのが、医療系廃棄物(注射器など)です。安全面・衛生面の観点から、混ざってはいけないものです。

ペットボトルのリサイクル工程には人の手も関わります。作業環境を守ることも、工程を支える大切な要素になります。こうした異物によって工場の工程が止まると、リサイクルの流れ全体に影響が及びます。処理が滞ると、ペットボトルベールの引き取りそのものが難しくなる場面も考えられます。

原料としての供給が不安定になれば、飲料用ペットボトルをつくる材料にも影響が及びます。

ボトルtoボトルの循環は、工場の中だけで完結するものではなく、私たちの暮らしとつながりながら成り立っています。異物に細かな注意が向けられるのは、この循環を安定して続けるためです。資源として次につながるかどうかは、出す段階からすでに決まっています。

工場の24時間稼働を支える働き方と、現場にある責任

同工場での受け入れは毎日続き、ペットボトル再資源化(ボトルtoボトル)も同じリズムで進みます。こうした流れを前提に、工場の運営は基本的に24時間稼働を軸に組み立てられています。

この体制を支えているのが、現場の働き方です。

同社では、リサイクル工程の勤務に「デュポン式」と呼ばれる4班2交代制を採用しています。1日あたりの勤務時間は12時間と長めになりますが、その分、休みをしっかり確保する設計で、年間の休日は185日。毎月7連休が必ず入るシフト勤務が組まれています。「集中して働き、きちんと休む」。工場が24時間稼働という前提があるからこそ、そこで働く人が無理なく安定して続けられる働き方が現場に根づいています。こうした積み重ねが、工程の品質や供給の安心を守っています。

職場環境にも特徴があります。本社が台湾にあることから、工場にはさまざまな国籍のメンバーが在籍しています。24時間稼働の現場を、多様なバックグラウンドを持つ人たちがそれぞれの持ち場で支えています。

また、働く人の中には、神戸から姫路まで通っているメンバーもいます。取材の中では、「自分の住んでいる市で、こうした取り組みが行われていることに誇りを持って活動している」という言葉も聞かれました。暮らしの延長線上にある場所で、資源循環を支える仕事に関わっている。その実感が、日々の業務を支える力になっています。

工場の稼働とベールの引き取りが続くことで、資源循環の流れは滞りなく続いて行きます。その中で醸成される「循環を止めることなく支えていく」という意識が、この現場の働き方や責任感の根底にあります。

▲中部~九州エリアの各地からペットボトルが運び込まれ、リサイクルを行っている姫路工場

製造工程から見た、ボトルtoボトルのCO削減効果

ペットボトルを石油由来の原料(バージン樹脂)から製造する場合、原料となる樹脂を一からつくる工程が必要になります。石油の採掘や輸送、樹脂の製造といった過程では多くのエネルギーが使われ、その分、二酸化炭素(CO2)も排出されます。

これに対し、使用済みペットボトルを原料としてペットボトルを製造する場合、すでに形づくられたリサイクル樹脂を出発点にできます。洗浄や選別、再加工といった工程は必要ですが、樹脂を石油からつくる場合と比べると、投入エネルギー量を抑えやすい工程になります。こうした違いが、製造段階におけるCO₂排出量の差として表れます。

同社では、石油由来の新しい樹脂を使う場合と比べ、リサイクル樹脂を使うことで、CO₂排出量をおよそ6割削減できるとしています。これは、原料調達から製造までを含めた工程全体を通して見たときの差を示したものです。こうした効果は、処理量が増えるほど積み重なっていきます。

姫路工場は年間およそ15万トンの使用済みペットボトルを受け入れられる体制が整っており、日本国内で発生するペットボトルの約4分の1を処理できる規模となっています。このうち、神戸市との直接契約による「ボトルtoボトル」リサイクルの量は、年間およそ4,000トンにのぼります。この量をリサイクル樹脂として活用した場合、石油から樹脂を製造する場合と比較して年間約3,000トン以上のCO₂削減につながります

分別の質が、リサイクルの結果を左右している

「ボトルtoボトル」リサイクルでは、回収されたすべてのペットボトルを原料として戻せるわけではありません。再生工程を経て、最終的にリサイクル可能な原料として残る割合は「歩留まり」と呼ばれ、回収されたペットボトルの状態によって左右されます。

日本で回収されているペットボトルは、大きく「家庭系」と「事業系」に分けられます。

家庭から出るペットボトルは、歩留まりがおよそ80%とされており、事業系(自販機やコンビニの回収分)の50〜60%に比べて高い水準にあります。全体で見ると、メカニカルリサイクルにおける平均的な歩留まりは、70%前後が一つの目安になります。

この差を生んでいるのが、分別の状態です。

ラベルやキャップが外され、他の素材が混ざっていないペットボトルほど、異物が少なく、再生利用可能な原料として残りやすくなります。家庭での丁寧な分別が、そのままリサイクル率の高さとして表れています。

取材では「中をすすぐ」「飲み切る」という点も、再生利用の現場にとっては重要な要素として挙げられました。特に夏場は、飲み残しでボトル内部の腐敗が進み、臭いや虫が発生することがあります。これは工程上の問題だけでなく、現場で働く人の作業環境にも影響します。市民がきれいな状態で排出することで、衛生的な作業環境が保たれ、工程全体が安定して回ります。

リサイクルのしくみは、設備や技術だけで成立しているわけではありません。家庭や事業所などでの適切な資源の分別、回収、工場での処理、原料としての再生、そして次の製品づくり。それぞれの段階が途切れずにつながることではじめて、持続可能な資源循環の営みとして機能します。

取材を通して見えてきたのは、日々の分別がリサイクル率を左右し、現場の働く環境を支え、結果としてCO₂排出量の削減にも結びついているという事実でした。家庭での行動は、工場の中の工程や数字と、連動しています。

1本のペットボトルが原料として戻るかどうかは、資源分別の段階から始まっています。

あなたが出した1本は、確かに次の1本へと受け継がれています。

 


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