つめかえパックという文化、環境への貢献。 つめかえパックの構造と水平リサイクル。
2023.01
つめかえパックという文化
みなさんはつめかえパックを使われていますか?つめかえパックは今では暮らしの中にすっかりおなじみになりました。中身をつめかえることで、シャンプーや液体洗剤などのプラスチック本体容器をくり返し使うことができ、省資源とごみの削減に役立っています。
花王では1991年からつめかえ製品を販売。1990年代から日用品メーカー各社がつめかえ製品を広めようと取り組んできました。日本石鹸洗剤工業会によれば、2020年には会員企業の出荷比率で8割以上がつめかえ・つけかえ製品になっています。これはメーカーだけではなく、販売店の推奨や、消費者が積極的に環境に良い選択を行うことで、「つめかえ」が日本の文化として定着したといえるのではないでしょうか。
出典;:日本石鹸洗剤工業会ホームページ
日本石鹸洗剤工業会 安全と環境 容器包装と3R対策 (jsda.org)
環境への貢献
では、どのくらいの省資源やごみの削減の効果があるのでしょうか。省資源については、つめかえパックを利用することで、本品容器に比べ、プラスチックの使用量を7~8割ほど削減することができます。
かさ(空気も含めた容積)では、さらに削減効果は大きくなります。1年の100世帯分のボトルを積み上げると1.8メートル(コンパクト洗剤の場合)の高さになるのに比べて、使用した後のつめかえパックはとても薄い状態になるため、0.1メートル程度の高さにしかなりません。
つめかえパックの構造
プラスチックの使用量を削減して薄くすると、中身を守る機能が弱くなってしまいそうですが、そうならないための秘密があるんです。その秘密は、つめかえパックは複数の性質の異なるプラスチックが重なった(貼り合わされた)、多種多層の構造。この構造によって、輸送での衝撃で破れたり穴が開いたりしないよう、とても丈夫につくられています。そして、紫外線などから中身を守るために、光や空気を通さないようになっています。このような工夫によって、つめかえパックはリデュースの優等生になることができたのです。
このように工夫されて作られているつめかえパックですが、そのリサイクルには苦戦しています。様々な素材が混じっていること、表面が印刷されていることから、色や強度、不純物などが課題となり、リサイクルには高い技術が必要となるからです。
水平リサイクルを目指して
この難しいつめかえパックのリサイクルを目指して、再生技術の開発を進めています。花王では、2021 年 6月より和歌山研究所にフィルム容器リサイクルのパイロットプラントを立ち上げ、つめかえパックから再びつめかえパックへ再生する「水平リサイクル」の実現をめざし、研究を進めています。
そして、回収されたつめかえパックを実験材料として活用し、再生技術・フィルム化技術の開発を進め、現在では使用済みつめかえパックを再生したプラスチックを原料に、つめかえパックの試作品が作れるようになりました。
左側が、再生樹脂を使ったつめかえパックの試作品で、右側が高純度化した再生樹脂を使用したつめかえパックの試作品です。
フィルムの再生技術だけでは、リサイクルの輪は実現しません。よりリサイクルしやすいつめかえパックを開発することや、生活者・小売のみなさんに分別・回収に協力していただくことも必要です。今後も、社会全体(市民・メーカー・小売・リサイクラー)でつめかえパックのリサイクルの実現を目指していきます。
ぜひ、一枚のつめかえパックを回収ボックスに入れてみることから、協力をお願いします。そして、これまでご協力をくださっている方々は、ぜひ引き続きのご協力をお願いします。
これからも、つめかえパックのリサイクルについて注目してくださいね!
(花王株式会社 研究開発部門 包装技術研究所/瀬戸 啓二)