まわり続けるリサイクル

ライバル飲料メーカー3社が連携!神戸市「エコノバ」から始まる、乳酸菌飲料容器リサイクルの挑戦

2026.03

いつも何気なく飲んで、捨てている「乳酸菌飲料」の小さなプラスチック容器。実は今、この容器を資源として回収し、新たな製品へと生まれ変わらせる画期的なプロジェクトが神戸市で進んでいます。

特筆すべきは、株式会社ヤクルト本社、日清ヨーク株式会社、雪印メグミルク株式会社という、普段はスーパーの棚で競い合う「ライバル企業3社」が手を取り合っていること。そして、その実証の舞台として選ばれたのが、私たち神戸市の資源回収ステーション「エコノバ」なのです。

今回は、プロジェクトを牽引する3社のご担当者に、お話を伺いました。

 

1. なぜ「神戸市」だったのか? 連携のきっかけ

 

Q.乳酸菌飲料容器の資源回収の取り組みが、なぜ神戸市でスタートしたのか教えてください。

ヤクルト 久保様: 私たちは、海洋プラスチック問題解決のために関連企業・団体が取り組むプラットフォーム「CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)」に参加しています。

様々なワーキンググループがある中で、「乳酸菌飲料容器を回収してみよう」という話になり、実際に資源回収ができる自治体との連携が必要になりました。

事務局に相談したところ、プラスチックの資源回収の先進的な取り組みをしている、神戸市を紹介されました。当時、既に「資源回収ステーション エコノバ」という場を持っていたことや、つめかえパックの回収・リサイクルなどの先行事例があることが大きな決め手に。神戸市環境局と前向きに進めることができ、2023年9月から連携がスタートしました。本プロジェクトには、弊社と日清ヨーク様は当初から、雪印メグミルク様は2025年11月から参加しています。

 

Q.自治体と連携するメリット、必要性はどの辺りにあるのでしょうか?

ヤクルト 久保様:容器は捨ててしまえば「廃棄物」となり、その処理の責任は自治体が持っています。そのため、自治体と一緒に取り組むことで、スピーディーな判断ができるというメリットがあります。また、企業だけの活動だと、自分たちの利益だけが目的と見られがちですが、自治体と連携することにより、公益性のある活動として市民の方に信頼していただけるのも大きなポイントですね。

 

2. 実はリサイクル優等生。「ポリスチレン」の秘密

 

Q.乳酸菌飲料の容器には「ポリスチレン」という素材が使われているそうですが、どのような特徴があるのでしょうか。

日清ヨーク 榊原様:ポリスチレンは軽く、成形性に優れており、大量生産に向いている素材です。乳酸菌飲料では、1968年にヤクルト様がガラス瓶からポリスチレン容器へ切り替えたのが最初で、それ以降業界で広く採用されています。

生きた菌が入っている乳酸菌飲料は賞味期限が短いため、酸素や水蒸気を通しにくいといった高いバリア性がそこまで求められないため、バリア性はさほど高くなくても、少ない量で丈夫な容器が作れるポリスチレンが適しています。また、単一素材で作られていることが多いため、比較的品質の良い廃棄物となり、元の素材に戻すケミカルリサイクルにおいても少ないエネルギーで済むという長所があります。

ところが、ペットボトルや古紙のように、リサイクルできる素材というイメージが薄く、回収の仕組みも確立されていないことが課題です。そのため、まずは「乳酸菌飲料の容器は、資源として再利用できる素材だ」と、皆さんに知っていただくことが、必要なのです。

 

Q.日本全国でどれくらいの容器が捨てられてしまっているのですか?

ヤクルト 久保様:3社合わせると、全国で1年間に約2万トンの使用済み乳酸菌飲料容器が主に家庭ごみとして出ていると推計できます。

「エコノバ」での回収が始まった2023年9月からの累計で、ちょうど2026年2月に回収量が500kgに達しました。これは乳酸菌飲料容器の本数に換算すると、なんと10万本以上になります!

 

 

3. 神戸市民の「ひと手間」がリサイクルを支えている

 

Q.「エコノバ」や啓発イベント会場などの現場で、神戸市民の皆さんと接して印象的だったエピソードや実感していることはありますか?

ヤクルト 久保様: ご自宅でヤクルトを宅配で購入されている高齢の方が、容器をためて持ってきてくださり、「回収すればいいのにとずっと思っていた、待っていた」とおっしゃっていただいた時は、「お待たせしてすみません」という気持ちになりました。また、多くの方が「良い活動だからもっと宣伝した方がいいよ」とおっしゃってくださり、応援していただいていることを実感しています。

 

雪印メグミルク 下浦様: 2025年11月23日に開催されたイベント「まちの文化祭2025」にて、来場されたお子様たちが試飲した後に、自分で容器を洗って回収ボックスへ入れるところまでの一連の流れを体験してくれました。うれしそうな顔で「洗ったよ!」と持ってきてくれるお子様もいて、自分ごととして考えてくれているのを感じました。

 

日清ヨーク 榊原様: 当初より、「エコノバ」で回収する容器は、他素材の混入が少なく、とても綺麗なものが集まっています。これからも、飲み終わった容器を軽く洗い、アルミ蓋を剥がして「エコノバ」にお持ちいただければ、その後のリサイクルが非常にスムーズになります。

 

ヤクルト 久保様: 協力への特典(インセンティブ)を設けるよりも、「分別することで質の高いリサイクルが可能になる」といったことや、「集めた容器がどうリサイクルされるか」という基本的な情報をお伝えすることが、市民の皆さんの協力に繋がると実感しています。

 

4. ライバル同士が手を組む「強み」と「可能性」

Q.「エコノバ」での乳酸菌飲料容器の回収には、3社が連携して取り組んでいらっしゃいます。企業が連携する価値をどう感じていらっしゃいますか?

雪印メグミルク 下浦様: 弊社は「環境負荷の低減」を重要課題として掲げ、バイオマスプラスチックの導入や容器の軽量化に取り組んでおりますが、リサイクル材の活用は、「原料の回収」が課題であり、一企業単独では対応が難しいという認識がありました。しかしながら、市場で広く認知されている商品をお持ちのヤクルト様、日清ヨーク様という兄貴分がいらっしゃる、本プロジェクトに参画することで、原料確保の可能性が大きく広がったと感じております。

 

ヤクルト 久保様:ライバル企業同士が一緒になってやっていることは、「営利目的だけでやっているわけではない」という公益性の裏付けになり、市民の皆さんへの安心感や信頼感に繋がっていると感じます。

 

日清ヨーク 榊原様:環境問題は、一つの企業ではどうしようもない部分があります。循環型社会を目指すには、消費する当事者(市民)と受け手側(自治体・企業)が同じ意識を持つことが必要です。みんなで力を合わせるこの「神戸モデル」は、様々な素材のリサイクル最先端と言えると思いますし、神戸市で終わらせず他の自治体へも展開していきたいです。

 

5. 容器から容器へ。未来へ向けたメッセージ

Q.最後に、使用済み容器を再び容器に戻す「水平リサイクル(Bottle to Bottle)」の展望と、神戸市民の皆さんへメッセージをお願いします。

ヤクルト 久保様: 乳酸菌飲料容器の水平リサイクルは、技術的には実現可能な段階にあり、近いうちに実証できると考えています。ただ、社会実装に向けては、きちんとビジネスとして回るように経済合理性を持たせることが目標です。まずは、市民の皆さんに楽しくプロジェクトに参加していただくことを目指しています。

 

日清ヨーク 榊原様: 神戸市と「エコノバ」での活動を通じて、コミュニティを大切にしながら、持続性をもってやっていきたいです。ぜひ一度、「エコノバ」へ乳酸菌飲料の容器を持って来てください。

 

雪印メグミルク 下浦様: 神戸市のイベントに実際参加し、神戸市民の皆様のリサイクルに対する高い意識に触れることができました。「エコノバ」で集められた一つひとつの容器が、ゴミではなく「未来への資源」として生まれ変わる、その新しい循環の輪を市民の皆様と一緒に育てていければと思っています。

 

取材を終えて

企業と自治体、そして市民が一体となって作る「まわり続けるリサイクル」。神戸から始まるこの挑戦に、私たちも毎日の“ふたを剥がして洗うひと手間”で参加できるなんて、素敵だなと感じました。“ごみが資源に変わる”「エコノバ」の活動を続けることが、未来を変えていく一歩になるはずです。

 

神戸市資源回収ステーション「エコノバ」紹介動画

 

神戸市資源回収ステーション「エコノバ」設置場所マップ

TOPへ戻る アイコン