つめかえパックリサイクル

つめかえパック水平リサイクル研究の最先端が 花王株式会社 和歌山研究所内のパイロットプラントにありました。

【つめかえパックリサイクル PROJECT REPORT VOL.1】

2023.01

神戸市と小売・日用品メーカー・リサイクラー(再資源化事業者)の18社が、循環型社会の実現に向けて協働し、市内76店舗と3施設に回収ボックスを設置、洗剤やシャンプーなど使用済みの日用品のつめかえパックを分別回収して再びつめかえパックに戻す「水平リサイクル」を目指す「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」。 (参画事業者数、回収拠点数は2022年10月1日現在)

今回訪問したのは、和歌山県和歌山市にある花王株式会社 和歌山研究所。神戸から約100㎞離れたこの場所に、つめかえパックの水平リサイクル研究を進めるパイロットプラント(実験用工場)がありました。

神戸市内で集められた使用済みつめかえパックは
研究開発のために、花王 和歌山研究所に運ばれます。

2021年10月1日の回収スタートから1年間で集まった使用済みつめかえパックは約1.13トン。回収したつめかえパックは、リサイクラーによって選別された後、水平リサイクルのパイロットプラント(実験用工場)に運ばれ、リサイクル技術の研究開発が進められます。
パイロットプラントがある花王株式会社 和歌山研究所は、神戸市内から車で約2時間、同じ敷地内には、国内外の花王の生産工場で最大規模、和歌山市内の広大な敷地に建つ生産工場があります。花王はつめかえ・つけかえ製品380品目(2021年12月時点)を生産する国内トイレタリーシェアトップのメーカーで、今回のプロジェクト参画事業者のひとつです。
今回、このパイロットプラントにはつめかえパックリサイクルのプロジェクトに参画する事業者約30名が全国から訪れました。参画事業者は定期的に検討会議を開き、競合の垣根を越えた課題解決策の議論や研究成果の情報交換等を行っています。

工場内の「花王エコラボミュージアム」は
地球環境や最新エコ技術を、展示・映像・体験プログラムで学べます。

広大な敷地にある花王 和歌山研究所。まず案内されたのは次世代環境技術の総合研究施設「エコテクノロジーリサーチセンター」の1Fにある「花王エコラボミュージアム」。花王は、環境に配慮したモノづくりをめざして、原材料選びからごみに出すまでのすべてをエコロジー視点で考える「いっしょにeco」に取り組み、先端エコ技術を体験できる「花王エコラボミュージアム」を開設しています。
ミュージアム内では、地球環境をテーマにした展示や、「製品をつくるときのエコ」「製品をつかうときのエコ」「ごみに出すときのエコ」など、テーマごとに実際の容器やイラストを使ったわかりやすい展示に分かれていて、「研究の森」をイメージした洗練された空間を巡りながら、毎日のくらしの中のエコを学ぶことができます。

選別・洗浄から粉砕・溶解・フィルム成型まで。
再生プラスチックを使用したフィルム容器リサイクルのパイロットプラント。

そしていよいよ、ミュージアムに隣接する、つめかえパックリサイクル(再生プラスチックを使用したフィルム容器リサイクル)のパイロットプラントに案内されます。このパイロットプラントが完成したのは2021年6月。実は、花王は神戸市のプロジェクト発足前からつめかえパックリサイクルの必要性を考え、すでに研究開発をスタートさせていました。大規模なプラント内はまさに実験用工場。作業行程に合わせて、大型の機械類が所狭しと並び、機械音が場内に響き渡ります。神戸市内の79ヶ所で回収された使用済みつめかえパックは、リサイクラー(再資源業者)によって異物を取り除くなど選別され、参画する12メーカーの使用済みつめかえパックが研究開発用に使われます。持ち込まれた使用済みつめかえパックは、選別からフィルム成型までがプラント内で行われ、完成したフィルムは、東京にある包装技術研究所に送られて容器の形状に製袋されます。

試作フィルムは異物の影響で穴だらけ。
異物を細かく砕くことで大きく改善。

つめかえパックのフィルムは、薄さ100~150マイクロメートルの中に、5~9つの複合素材が使用され、何層にも重なっています。中身の剤を長期間変質させないように守る必要があるため、フィルムが複雑な構造になってしまうことが水平リサイクルを困難にしていました。プラスチック素材以外の異物をいかに除去するかが水平リサイクルの大きな課題です。プラントでの作業工程は、まずスタッフが目視で紙シール等の異物を除去し、金属探知機でアルミ箔を含むフィルムを除去。そして洗浄破砕機に投入し、洗浄しながら1㎝角程度に破砕し、乾燥させます。
さらに微粉砕機で細かく粉砕後、溶融混練機で溶かして練り上げて棒状に押し出します。この棒状の素材を水で冷やしたら、小さくカットしてペレット状に。この再生したプラスチックペレットをフィルム化し、フィルムの状態や耐久性をチェックします。
研究当初の完成フィルムは、アルミ箔や印刷部分のインクが異物となり、透明感のない濃い緑色で、穴だらけになっていたそうですが、異物を微粉砕することで、半透明の袋を作るところまでは改善されたとのことでした。

 

困難と思われていたつめかえパックの
水平リサイクルがもうすぐ現実に。

短時間のパイロットプラント見学でしたが、印象的だったのは、花王の技術力の高さはもとより、従事するスタッフから、「自分たちの手で水平リサイクルを実現する」という強い意気込みと誇りを感じたこと。まだまだ超えなければならないハードルはあるとしても、様々な困難を乗り越え、技術革新は進んでいるとリアルに感じます。
見学を終えた、参画事業者らもこの後、遅くまで4つのワーキンググループ(技術検討、回収パック利用拡大、未来、認知拡大)に分かれ、議論・検討を行っていました。
ペットボトルが水平リサイクルを実現したように、不可能だと思われていたつめかえパックリサイクルが実現する。神戸に結集した企業のパワーが循環型社会を実現する大きな牽引力になるのは間違いありません。

花王株式会社 和歌山工場/和歌山研究所 和歌山県和歌山市湊1334
花王エコラボミュージアム (一般見学は事前の電話申込が必要です。)

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