つめかえパックリサイクル

スタートから1年、動脈産業と静脈産業が前例のないタッグ。「つめかえパックリサイクル」に結集した、日本企業の大きな決意。

【つめかえパックリサイクル PROJECT COLUMN VOL.1】

2022.12

神戸市と小売・日用品メーカー・リサイクラー(再資源化事業者)の18社が、循環型社会の実現に向けて協働し、市内76店舗と3施設に回収ボックスを設置、洗剤やシャンプーなど使用済みの日用品のつめかえパックを分別回収して再びつめかえパックに戻す「水平リサイクル」を目指す「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」。
(参画事業者数、回収拠点数は2022年10月1日現在)
スタートから1年、改めてこのプロジェクト発足の経緯を振り返ります。

日本国内のプラスチック廃棄量は約822万トン。
リサイクル率は実質約24%。

プラスチックは、簡単に自由な形に成形でき、軽くて安価等の特徴を持つ優れた素材で、あらゆる製品や容器包装に使用されていますが、同時に、日本国内だけで年間約822万トン※1が廃棄されています。
家庭から排出されるプラスチック製品のうち、実際に分別回収されている割合はおよそ半分程度。これは分別収集する自治体のコスト負担増と、汚れたプラスチック製品が分別回収されないことが大きな要因です。
プラスチックは、多種類の複合材も多く、再資源化のコストが高いため、資源として製品にリサイクルされる比率は実質24%程度で、ぽい捨てや不適切に処理された大量のプラスチックが海に流れ込み、海洋汚染につながるなど、プラスチックの問題は今や地球全体の社会課題となっています。

 

利用目的を定めて、必要なプラスチックを集める。
「まわり続けるリサイクル」の実現へ。

この問題を解決するためには、プラスチックの使用量を減らし、使い終わったプラスチックは適切に回収して、資源としてリサイクルし、繰り返し使い続けるしかありません。そこで神戸市は、これまでの「集めたものをどうリサイクルするのか」という考え方から、「何にリサイクルするためにどのようなものを集めるか」へ発想を転換し、現状のプラスチックリサイクルを一歩進める新たな取り組みを始めます。これが神戸市の推進する「まわり続けるリサイクル」です。
具体的には、食品トレイにリサイクルするためにトレイを集めるように、循環型リサイクルに適したプラスチック資源を、何にリサイクルするかを明確にした上で、市民が気軽に持ち込める拠点で回収する。
この流れをわかりやすく「見える化」することで、「環境問題解決に参加している意識」が生まれ、分別意欲も高まります。その結果、きれいに分別回収されたプラスチックは「水平リサイクル」※2を実現しやすくなります。

「まわり続けるリサイクル」に不可欠な
メーカー、小売、リサイクラー、市民の協力体制。

「まわり続けるリサイクル」の実現は、神戸市だけでは不可能で、メーカー、小売、リサイクラー、市民が協力してリサイクルを行う新しい循環の仕組みが必要です。
特に、製造業など製品を生み出す「動脈産業」と呼ばれるメーカーと、その廃棄物を回収して処理、処分、再資源化を担う「静脈産業」と呼ばれるリサイクラー。血液の循環に例えてこのように呼ばれる両者が、製造、回収、再資源化をバランスよく循環し続けることが大切です。これまであまり協働することがなかった動脈と静脈ががっちりタッグを組む。今、日本は大きな資源リサイクルの変革が求められています。

つめかえパックの水平リサイクル実現が
循環型社会への大きなインパクトに。

日用品メーカー各社は、これまでも製品の濃縮によるコンパクト化、つめかえ・付替え用製品の開発・発売により、使用後に廃棄する容器包装プラスチック使用量の削減努力を続け、製品の売り上げが増加してもプラスチックの使用量の増加を抑制してきました。
その結果、日本では世界的に例がないほどつめかえパックが浸透し、販売されている容器の80%がつめかえ・付替え用製品となっています。
一方で、様々な特性を持つ多層構造フィルムのつめかえパックの水平リサイクルは技術的に困難だとされ、多くは焼却され熱エネルギーを回収するサーマルリカバリーに使われています。
プラスチックごみの発生抑制に貢献してきたつめかえパックにおいても、困難を乗り越えて技術革新が進めば、循環型社会実現の大きなインパクトになると考えました。

 

神戸市の呼びかけに賛同した
小売・日用品メーカー・リサイクラー18社が結集。※3

つめかえパックの水平リサイクルを実現する持続可能な回収スキームと新しい循環経済のビジネスモデルを構築するプロジェクトに参画したのは、神戸市の呼びかけに賛同した【小売4社】ウエルシア薬局株式会社、生活協同組合コープこうべ、株式会社光洋、株式会社ダイエー【日用品メーカー12社】アース製薬株式会社、花王株式会社、牛乳石鹸共進社株式会社、クラシエホールディングス株式会社、株式会社コーセー、小林製薬株式会社、サラヤ株式会社、サンスター株式会社、シャボン玉石けん株式会社、株式会社ミルボン、ユニリーバ・ジャパン・カスタマー・マーケティング株式会社、ライオン株式会社 【リサイクラー2社】アミタ株式会社、大栄環境株式会社 の日本を代表する企業18社。

こうして2021年10月1日、神戸市をフィールドに意志を同じくする企業が「競合」の垣根を超えて「協働」し、プラスチックを同じ用途で使い続けることで天然資源の消費を抑制する、つめかえパックの「水平リサイクル」(フィルムtoフィルム)に挑戦する「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」がスタートしました。

 

※1 一般社団法人 プラスチック循環利用協会 廃プラスチックの総排出量・有効利用量・有効利用率の推移より(2020年)
※2 使用済み製品が資源となり、また同じ製品として生まれ変わるリサイクルのこと
※3 2022年10月1日時点

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